注文住宅の月々の返済額は、借りられる金額ではなく、住宅に関する支出を払った後も生活を無理なく続けられる金額から決めます。住宅ローンの返済額だけでなく、固定資産税、火災保険、修繕費、管理費なども含めて考えることが大切です。
注文住宅の月々の返済額は「住居費の総額」で決める
まず、毎月の住居費にいくらまで充てられるかを決め、その金額から住宅ローン以外の費用を差し引きます。
基本の考え方は次のとおりです。
住宅ローンの毎月返済額 = 住居費に回せる上限額 − 住宅ローン以外の住居費
住宅ローン以外には、次のような費用があります。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険・地震保険
- 将来の修繕費
- 自治会費などの維持費
- 太陽光発電や設備のメンテナンス費
- 土地や建物に関する借入以外の返済
マンションとは異なり、戸建て住宅では修繕積立金を毎月支払わないケースもあります。しかし、外壁、屋根、給湯器などの修繕費は将来必要になるため、毎月少しずつ準備しておくと安心です。
返済額を決める前に、毎月の家計から上限を計算する
返済額の上限は、手取り収入から現在の生活費、将来の支出、貯蓄額を差し引いて考えます。計算には、住宅購入後の家計を使うことが重要です。
- 住宅購入後の毎月の手取り収入を確認する
- 食費、通信費、教育費、保険料、車の費用などを洗い出す
- 住宅ローン以外の住居費を見積もる
- 毎月の貯蓄・投資に回す金額を残す
- 残った金額を住宅ローン返済額の上限として検討する
ボーナスや残業代など、毎回の金額が変わる収入は、返済額の計算に全額含めないほうが安全です。基本給など、継続性を見込みやすい収入を中心に考えます。
返済負担率だけで判断しない
金融機関が審査で使う返済負担率は、借入可能額を判断するための基準の一つです。しかし、審査に通る金額が、家計にとって無理のない金額とは限りません。
返済負担率を確認するときは、住宅ローンだけでなく、自動車ローン、カードローン、教育ローンなどの返済も含まれるかを確認します。また、審査上の計算方法と実際の家計の収支は異なる場合があります。
そのため、「借りられる額」ではなく「返し続けられる額」から借入額を逆算するのが基本です。
返済額の目安は家庭によって異なる
住宅費を手取り月収の何%にするかという目安が紹介されることがありますが、家族構成や地域、車の有無、子どもの進学先によって適正額は変わります。割合だけで返済額を決めることはできません。
たとえば、同じ手取り月収でも、次の条件がある家庭は住宅ローンに回せる金額が小さくなりやすい傾向があります。
- 自動車を2台以上所有している
- 子どもの進学や習い事に費用がかかる
- 現在または将来の教育費が大きい
- 毎月の貯蓄額を増やしたい
- 片働きになる可能性がある
- 親の介護や家族の医療費が見込まれる
反対に、車が不要な地域に住む、子どもがいない、十分な自己資金があるといった場合は、同じ収入でも家計の余裕が変わります。
仮定例で見る月々の返済額の決め方
以下は実際の料金や推奨額ではなく、考え方を示すための計算例です。
仮に、住宅購入後の手取り月収が35万円、住宅以外の生活費と貯蓄に26万円必要だとします。固定資産税や保険、修繕費などの住宅ローン以外の住居費を月3万円と見積もる場合、計算は次のようになります。
35万円 − 26万円 − 3万円 = 6万円
この計算では、住宅ローンの返済額を月6万円以内に収める考え方になります。ただし、将来の教育費や収入減少への備えが十分でなければ、さらに返済額を下げる必要があります。
逆に、生活費を少なく見積もっている場合や、固定資産税などを含めていない場合は、月6万円でも実際には家計が赤字になる可能性があります。
注文住宅の総額から月々の返済額を逆算する
月々の返済額を決めたら、その返済額で借りられる金額を確認し、自己資金と合わせて建築予算を決めます。
注文住宅では、建物本体価格だけでなく、土地代、付帯工事費、外構工事費、設計費、登記費用、住宅ローンの諸費用などもかかります。広告などに表示された建物本体価格だけで、総額を判断しないようにします。
予算は次のように整理します。
注文住宅に使える総予算 = 無理のない借入額 + 使える自己資金
自己資金をすべて頭金に充てると、引っ越し費用や家具・家電の購入費、病気や失業などへの備えが不足することがあります。手元に残す生活予備費を決めたうえで、頭金に回す金額を考えます。
住宅ローンの返済額を比較するときの条件
住宅ローンの返済額は、借入額だけでなく、金利タイプ、返済期間、ボーナス返済の有無で変わります。比較するときは、条件をそろえて確認します。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 借入額 | 土地・建物・諸費用を含む総額に対して、いくら借りるか |
| 金利タイプ | 金利が変わる可能性や、返済額の見直し条件 |
| 返済期間 | 毎月返済額だけでなく、返済終了時の年齢や総支払額 |
| ボーナス返済 | ボーナスが減った場合でも返済できるか |
| 諸費用 | 融資手数料、保証料、登記費用、火災保険料などの支払い方法 |
返済期間を長くすると月々の返済額を下げやすくなりますが、金利や借入条件によっては総支払額が増えることがあります。月々の金額だけでなく、定年後まで返済が残らないか、繰り上げ返済を無理なくできるかも確認します。
ボーナス返済は前提にしすぎない
ボーナス返済を組み込むと、通常月の返済額は下がります。しかし、ボーナスは会社の業績や勤務状況によって変わる可能性があります。
ボーナスがなくても通常の返済を続けられる計画にし、ボーナス返済を使う場合も金額を抑えることが重要です。ボーナスを生活費や教育費に使う可能性がある家庭では、ボーナス返済なしで比較すると判断しやすくなります。
将来の家計を入れて返済額を確認する
現在の家計だけでなく、住宅ローンの返済期間中に収入と支出がどう変わるかを確認します。特に、子どもの進学、育児休業、転職、定年退職、車の買い替えは、家計に大きく影響します。
少なくとも、次の3つのケースで返済できるかを確認します。
- 現在と同じ収入が続く場合
- どちらか一方の収入が一時的に減る場合
- 教育費や車の買い替えなど、大きな支出が発生する場合
夫婦の収入を合算して返済額を決める場合は、出産や育児、転職などで収入が減る期間も計算に入れます。収入が戻る予定だけを前提にせず、収入が減った状態でも一定期間返済できるかを確認してください。
返済額を決めるときに避けたい考え方
次のような決め方は、住宅購入後に家計が苦しくなる原因になりやすいため注意が必要です。
- 金融機関が提示した借入可能額をそのまま予算にする
- 建物本体価格だけを見て総額を判断する
- ボーナスが毎回支給される前提で計算する
- 固定資産税や修繕費を考えない
- 現在の家賃と同じ金額なら無理がないと判断する
- 貯蓄をほとんど残さず頭金に充てる
現在の家賃には、固定資産税や将来の修繕費が含まれていないことがあります。そのため、家賃と住宅ローンの返済額だけを比べるのではなく、購入後の住居費全体で比較します。
注文住宅の月々の返済額を決める手順
最初に、住宅ローンの借入額ではなく、家計から無理のない住居費の上限を出します。
- 住宅購入後の手取り収入を、無理のない前提で見積もる
- 生活費、教育費、保険料、車の費用、現在の借入返済を一覧にする
- 毎月残したい貯蓄額と生活予備費を決める
- 固定資産税、保険、修繕費などを月額に換算する
- 住宅ローンに回せる月額の上限を計算する
- 金利タイプ、返済期間、ボーナス返済の条件をそろえて借入額を試算する
- 土地代、建物代、諸費用を含めた総額が予算内に収まるか確認する
- 収入減少や大きな支出があっても返済できるか再確認する
試算では、毎月返済額だけでなく、年間返済額、総返済額、返済終了時の年齢も確認します。金利が変わる可能性のあるローンでは、金利上昇時の返済額も確認しておくと、計画の弱点を見つけやすくなります。
注文住宅の月々の返済額は、借入可能額から決めるのではなく、住宅ローン以外の住居費、生活費、貯蓄、将来の支出を差し引いて決めます。まず家計から無理のない上限を計算し、その金額に収まる借入額と建築予算を検討してください。







